
キウイの新品種はどう生まれる?木と花のふしぎな関係
こんにちは、ときわオンラインのヨシハマです。
キウイの新しい品種って、どうやって作られていると思いますか?
「甘いキウイ同士をかけ合わせるんでしょ?」
だいたい合っているんですが、その手前に、キウイならではの事情があるんです。
というのも――
キウイには、オスの木とメスの木があります。
そして、実がなるのはメスの木だけ。
オスの木は、一生ひとつも実をつけません。
「じゃあ、なんでオスの木を植えるの?」
そこが今日の話の入り口です。
今日は、
- キウイはどんな木になるのか
- オスの花とメスの花のちがい
- 農家さんが自然まかせにしない理由
- 新品種はどうやって作られるのか
- なぜ10年もかかるのか
まで、果物屋の目線でお伝えします。
スーパーの新品種の見え方が、たぶん変わりますよ。
それでは、いきましょう!
そもそも、キウイはどんな木になるのか

意外と知られていないのですが、
キウイは「木」というより「つる」です。
りんごや桃のように、幹が立って枝を広げるのではなく、
ぶどうのように、つるを伸ばして這っていく。
だからキウイ畑に行くと、頭の上に棚があります。
棚から、実がぶら下がっている。
見上げると、緑の葉っぱのあいだから
茶色い実がびっしり垂れ下がっていて、なかなか壮観です。
分類でいうと、キウイはマタタビ科マタタビ属。
猫が好きな、あのマタタビの仲間なんですね。
日本の山に自生するサルナシ(コクワ)も同じ仲間です。
そして――
このマタタビの仲間には、ある大きな特徴があります。
キウイには、オスの木とメスの木があります

ここが今日いちばん大事なところです。
キウイは雌雄異株(しゆういしゅ)という性質を持っています。
オスの木とメスの木が、別々に存在する。
人間でいえば、木そのものに性別があるようなものですね。
そして――
実がなるのは、メスの木だけです。
オスの木は花を咲かせますが、実は一切なりません。
では、なぜオスの木を植えるのか。
花粉を出すためです。
メスの花にオスの花粉が届かないと、実はなりません。
だからキウイ畑には、必ずオスの木が混ざっています。
「あの木、実がなってないな」と思っても、それは不良品ではなくて、
花粉係のオスの木なんですね。
オスの品種にも名前があります
面白いのは、オスの木にも品種名があるということ。
代表的なのが、この2つです。
| オスの品種 | 開花時期 | 相性のいいメスの品種 |
|---|---|---|
| トムリ | 遅咲き | ヘイワード、香緑など |
| マツア | 早咲き | 早めに咲くメス品種 |
なぜ2種類あるのかというと、
メスの品種によって、花が咲く時期が違うからです。
メスが咲いているときにオスが咲いていないと、花粉が届きません。
だから――
メスの開花時期に合わせて、オスの品種を選ぶ。
苗を買うときに「ヘイワードにはトムリを」と書かれているのは、
この組み合わせのことなんですね。
オスの花とメスの花は、見た目が違います

キウイの花は、5月から6月ごろに咲きます。
白くて、梅の花に少し似た、かわいらしい花です。
そして、オスとメスでは中身が違います。
| 比べるところ | オスの花 | メスの花 |
|---|---|---|
| 花粉 | たくさん出る | ほとんど出ない |
| 中心の形 | 雄しべだけ | 雌しべが放射状に伸びる |
| 実 | ならない | なる |
| 花の数 | 多い | オスより少なめ |
メスの花の中心をのぞくと、
白い糸のようなもの(雌しべ)が、放射状に広がっています。
・・・この形、どこかで見覚えありませんか?
キウイを切ったときの、あの放射状の模様。
そう、花の形が、そのまま実の断面になるんですね。
僕はこれを知ったとき、ちょっと感動しました。
普段なにげなく食べている断面が、花のかたちだった。
果物って、こういうところが面白いんですよね。
農家さんは、受粉を自然まかせにしません

さて、オスとメスがそろえば実がなる――
というほど単純ではありません。
自然の受粉だけに任せると、実の数が足りなかったり、小さくなったりします。
だから多くの農家さんは、人の手で花粉を付けます。
人工授粉ですね。
やり方はいろいろありますが、
- オスの花から花粉を集めておく
- 筆や専用の器具で、メスの花にひとつずつ付けていく
という、かなり地道な作業です。
キウイの花は一気に咲くので、時間との勝負でもあります。
ゴールド系は、もっと大変です
とくに手がかかるのがゴールドキウイです。
というのも――
オスの花が、メスより1週間ほど遅れて咲くことがあるんです。
メスが咲いているのに、オスがまだ咲いていない。
これでは受粉できません。
そこで農家さんは、前の年の花粉を冷凍保存しておくそうです。
去年の花粉で、今年の実をならせる。
・・・すごい話だと思いませんか。
僕たちがスーパーで何気なく手に取るゴールドキウイの裏側に、
こういう手間があるわけです。
新品種づくりは「どの親を組ませるか」から始まる

ここからが本題です。
新しい品種は、どうやって作られるのか。
出発点は、いたってシンプルです。
「こういう実がほしい」という目標を決めて、親を選ぶ。
たとえば、こんな具合です。
| ほしい性質 | 選ぶ親 |
|---|---|
| もっと甘くしたい | 糖度の高い品種をメス親に |
| 病気に強くしたい | 耐病性のある野生種をオス親に |
| 暑さに強くしたい | 暖かい地域に自生する種を使う |
| 大きくしたい | 実の大きい品種を組ませる |
そして、目的のオスの花粉だけを、メスの花に付けます。
ここで自然まかせにしてしまうと、
どの花粉が付いたのか分からなくなる。
だから人の手で、確実に。
「掛け合わせ」というのは、つまりこの作業のことなんですね。
交配から品種登録まで【6ステップ】

受粉すると実がなり、その中に種ができます。
その種をまくと、両親の性質を混ぜ持った苗が育つ。
ここから先が、長い道のりです。
| 段階 | やること |
|---|---|
| ① 交配 | 目的のオスとメスを掛け合わせる |
| ② 播種 | できた種をまいて、苗を育てる |
| ③ 待つ | 実がなるまで数年かかる |
| ④ 選抜 | 味・大きさ・色・病気への強さでふるいにかける |
| ⑤ 再選抜 | 残った系統を、さらに何年も観察する |
| ⑥ 品種登録 | ようやく名前がつく |
しんどいのは③と④です。
種をまいても、すぐには実がなりません。
数年待って、やっと実がひとつなる。
しかも――
そのほとんどが、期待外れです。
「思ったより甘くない」
「実が小さい」
「病気に弱かった」
何百、何千という苗の中から、残るのはごくわずか。
そして残ったものも、その後さらに何年も観察されます。
一度なっただけでは、毎年安定して同じ実がなるか分からないからです。
新品種ひとつに、およそ10年
ここまでを通すと、だいたい10年と言われています。
つまり――
いまスーパーに並んでいる新品種は、10年前に誰かが花粉を付けたもの。
そう思うと、ちょっと見え方が変わりませんか。
10年前に「こういうキウイを作りたい」と考えた人がいて、
筆で花粉を付けて、種をまいて、何年も待って、選んで、また待って。
その結果が、いま僕たちの手元にある。
果物屋をやっていると、この時間の長さを実感します。
香川の品種で見る、掛け合わせの実例

抽象的な話が続いたので、実例を出しますね。
香川県は、キウイのオリジナル品種の数が日本一(10品種)です。
うちが取引している深山のキウイさんも、香川の農家さん。
具体的に見ていきましょう。
| 品種 | 掛け合わせ | 品種登録 |
|---|---|---|
| 香緑(こうりょく) | ヘイワードの自然交雑 | 1987年 |
| 讃緑(さんりょく) | 香緑 × 中国系キウイの雄系統 | 1999年 |
| さぬきゴールド | アップル系品種 × 中国系キウイの雄品種 | 2005年 |
| さぬきキウイっこ | シマサルナシ × 中国系(チネンシス種) | 2014年 |
見えてくるものがあります。
● 讃緑は、交配から登録まで13年
香川県農業試験場が1986年に香緑と中国系キウイを交配し、
品種登録されたのが1999年。
13年かかっています。
さきほど「およそ10年」と書きましたが、
それが実際の数字として出ているわけですね。
● 香緑は「自然交雑」から生まれた
こちらは人が組ませたのではなく、
ヘイワードが自然に交雑してできた実生から選ばれた品種です。
つまり、偶然の産物。
品種って、狙って作るものばかりではないんですね。
畑をよく見ている人が、たまたま生えた木の実を食べて「これは違うぞ」と気づく。
そういう発見の仕方もあるわけです。
● さぬきゴールドは「アップル系」が親
さぬきゴールドは160〜180gの大玉で、200gを超えるものもあります。
その大きさは、アップル系品種という親から来ているんですね。
親を見ると、その品種がなぜそうなったのかが分かる。
これが掛け合わせの面白いところだと思います。
さぬきキウイっこ|「ピリピリしない親」を選んだ結果

最後に、いちばん面白い例をお話しさせてください。
さぬきキウイっこです。
この品種の親は、シマサルナシという植物です。
日本の温暖な沿岸部に昔から自生している、キウイの近縁種ですね。
そして、シマサルナシには特徴があります。
舌がピリピリする原因の酵素(アクチニジン)が、もともと少ない。
だから――
その子であるさぬきキウイっこも、舌が痛くなりにくい。
これ、偶然ではありません。
「ピリピリしない親を選んだから、ピリピリしない子ができた」
という、掛け合わせの狙いがそのまま出た結果なんです。
さらにシマサルナシは暑さに強く、病気にも強いとされていて、
その性質も受け継いでいるそうです。
そして、シマサルナシは皮に毛がありません。
さぬきキウイっこの皮がつるんとしているのも、親ゆずりなんですね。
中国から来たキウイと、日本の海辺に自生していた実。
その両方を親に持つ品種が、いま香川で作られている。
僕がこの品種を「推し」と言い続けているのは、
味だけじゃなく、こういう背景が面白いからでもあります。
※【参考】さぬきキウイっこについては、こちらで詳しく書いています。
※【参考】キウイが中国から世界へ渡った経緯は、こちらにまとめました。
まとめ:10年前の花粉が、いまの実になっています

今日のお話を、まとめますね。
- キウイは木というより「つる」。棚から実がぶら下がる
- マタタビ科マタタビ属。猫のマタタビや、山のサルナシと同じ仲間
- オスの木とメスの木があり、実がなるのはメスだけ
- オスの木は花粉を出すためだけに植えられている
- オスにも品種名がある(トムリ=遅咲き、マツア=早咲き)
- メスの花の雌しべの形が、そのままキウイの断面の模様になる
- 農家さんは人の手で花粉を付ける。ゴールド系は前年の花粉を冷凍保存することも
- 新品種は「どの親を組ませるか」から始まり、登録までおよそ10年
- 讃緑は交配から登録まで13年かかっている
- 香緑は自然交雑からの偶然の産物
- さぬきキウイっこは「ピリピリしない親」を選んだ結果
実がなるのはメスの木だけ。
この一点を知っているだけで、キウイ畑の見え方が変わります。
実がなっていない木は、失敗ではなくて、必要な木なんですよね。
そして新しい品種は、
筆で花粉を付けるところから、10年かけて生まれてくる。
僕たちが「新品種が出たね」と手に取るものは、
誰かが10年前に始めた仕事の結果なんです。
うちのショップでは、香川・深山のキウイさんの香緑・讃緑・さぬきキウイっこと、
和歌山・グリーンジャンクションさんの無農薬キウイ(ヘイワード)を農家直送でお届けしています。
1928年生まれのヘイワードと、2014年生まれのさぬきキウイっこ。
86年ぶんの品種改良を、食べ比べてみるのも面白いと思いますよ。
本日は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
ときわオンラインのヨシハマでした。
それでは〜!
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