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巨峰のすべて。「売れなかった」ぶどうが、王様になるまでの物語

ぶどう秋山農園

こんにちは、ときわオンラインのヨシハマです。

「ぶどうといえば?」

そう聞かれて、多くの方が思い浮かべるのが巨峰じゃないでしょうか。

あの黒紫の大粒。
ぷちっと皮から実が飛び出す食感。
濃厚な甘さと、ほどよい酸味。

「ぶどうの王様」と呼ばれる、日本を代表するぶどうです。

でも、その巨峰について、こんなことを知っている方は少ないと思います。

  • 巨峰は戦争のさなかに生まれたこと
  • 「巨峰」は実は品種名じゃないこと
  • デビュー当時はまったく売れなかったこと
  • そして、あの「ぶどう狩り」は巨峰が生んだ文化だということ

・・・どうですか、気になりませんか?(笑)

今日は果物屋のヨシハマが、巨峰のすべてを、たっぷり語り尽くします。

読み終わる頃には、巨峰を食べる目が変わっているはずですよ。

それでは、いきましょう!

巨峰は「戦争の時代」に生まれた

巨峰

まずは誕生の物語から。

巨峰を生み出したのは、大井上康(おおいのうえ やすし)という在野の農学者です。

彼は静岡県の伊豆に自分の研究所を構え、「日本の風土に本当に合う、理想の大粒ぶどうを作りたい」という夢を追いかけていました。

交配に着手したのは、1937年(昭和12年)

かけ合わせたのは、この2品種です。

  • 石原早生(いしはらわせ):岡山生まれの日本の品種
  • センテニアル:オーストラリア(豪州)由来の品種

そして1942年(昭和17年)、ついに理想の新品種が誕生します。

・・・でも、この年号にピンときた方、いますか?

1942年は、太平洋戦争のまっただ中です。

食料さえ足りない時代に、「大きくて甘いぶどうを作る」なんて研究は、決して歓迎されるものではありませんでした。

だから大井上さんたちは、半ば隠れるようにして、この研究を続けていたと言われています。

そんな時代に生まれた一房のぶどう。

・・・すごい執念だと思いませんか?

「巨峰」という名前は、実は品種名じゃない

ぶどう 巨峰

ここで、ちょっとした豆知識を。

実は、「巨峰」は品種名ではありません。

正式な品種名は、「石原センテニアル」

かけ合わせた2つの親の名前を並べた、なんとも真面目な名前ですね(笑)

じゃあ「巨峰」とは何かというと、

商品名(商標)なんです。

1955年(昭和30年)に商標登録されています。

では、なぜ「巨峰」なのか。

由来は、大井上さんの研究所から見えた、富士山の雄大な峰

大粒で堂々としたそのぶどうを、日本一の山に重ねたわけですね。

「石原センテニアル、どうぞ」

と言われるより、

「巨峰です」

と言われた方が、断然おいしそうな気がします(笑)

ネーミングの力、恐るべしです。

デビュー戦は大失敗。「売れないぶどう」だった

巨峰

さあ、ここからが今日の一番のドラマです。

戦後、この新しいぶどうは世に出ることになります。

ところが――

まったく売れなかったんです。

理由は、いくつもありました。

● 運ぶと粒が落ちてしまう
巨峰は粒が大きくて重い。
当時の輸送環境では、運んでいる途中でポロポロ落ちてしまったんです。

● 傷みやすい
デリケートで、市場に着く頃には見栄えが悪くなってしまう。

● 高すぎる
大粒で立派なぶん、値段も高い。
「こんな高いぶどう、誰が買うの?」という反応だったそうです。

市場からは相手にされず、「作っても売れない」という苦しい時代が続きました。

今や「ぶどうの王様」の巨峰が、デビュー当時は誰にも見向きもされなかった。

・・・なんだか、売れない時代を過ごしたスターみたいで、グッときませんか?

逆転の一手は、まさかの「ぶどう狩り」だった

「運ぶと傷む」「市場で売れない」

さて、あなたならどうしますか?

このピンチに、巨峰を育てていた人たちは、とんでもない発想の転換をします。

「運べないなら、お客さんに来てもらえばいい」

そう。

これが、日本の「観光ぶどう狩り」の始まりです。

舞台となったのは、福岡県久留米市の田主丸(たぬしまる)町

大井上さんの弟子だった越智通重さんが、「この土地は巨峰に合う」と見抜いて、1957年ごろから栽培を始めた地域です。

田主丸の農家さんたちは、売れない巨峰を前にして、「畑に来て、その場で食べてもらう」という新しいビジネスを生み出しました。

これが、日本のフルーツ狩りの草分けとして大ヒットするんです。

畑で食べる巨峰は、運ぶ必要がないので、完熟の一番美味しい状態。

しかも、お客さんは「体験」も一緒に持ち帰る。

弱点だった「運べない」を、「その場で食べる楽しさ」に変えてしまった。

見事な逆転劇ですよね。

今、僕たちが秋にぶどう狩りを楽しめるのは、実はこのときの巨峰農家さんたちのアイデアのおかげなんです。

田主丸は今も「巨峰開植の地」として知られていて、巨峰ワインも造られています。

巨峰の味の特徴は「甘さと酸味のバランス」

さて、肝心の味の話をしましょう。

巨峰の魅力を、僕なりに言語化するとこうです。

● 濃厚な甘さ(糖度18〜20度前後)
シャインマスカットのような爽やかさとは違う、どっしりとした「ぶどうらしい甘さ」があります。

● 甘さを支える、ほどよい酸味
ここが巨峰の一番いいところ。

甘いだけのぶどうって、実は途中で飽きてしまうんです。

巨峰には適度な酸味があるので、一粒、また一粒と、手が止まらなくなる。

● あの「ぷちっ」とした食感
皮をむいて、実がぷるんと出てくるあの感覚。
そして果肉のジューシーさ。

● 芳醇な香り
巨峰特有の、甘い香り。
箱を開けた瞬間の、あの幸せな瞬間です。

シャインマスカットが「軽やかな爽快感」なら、巨峰は「深みとコクの王道」

どちらが上とかではなく、まったく違う魅力なんですよね。

僕は正直、「疲れているときは巨峰が食べたくなる」派です(笑)

実は「種なし巨峰」は、けっこう最近の話

巨峰

「最近の巨峰って、種がないよね?」

そう思った方、鋭いです。

昔の巨峰といえば、種をぷっと出しながら食べるものでした。

種なし巨峰が普及したのは、わりと最近のことなんです。

種をなくす方法として使われているのが、「ジベレリン処理」という技術。

植物ホルモンの一種であるジベレリンの液に花の房を浸すことで、受粉しなくても実が育つようになる、という仕組みです。

(※薬品と聞くと不安になるかもしれませんが、これは植物由来の成分で、安全性が確認された一般的な農業技術です。安心してくださいね)

昭和50年代にはすでに研究されていたものの、巨峰のような大粒品種は扱いが難しく、当時は実用化を断念。

本格的に広まったのは、2000年を過ぎたあたりからと言われています。

そして今では、「食べやすい」という理由から種なしの方が高く売れるという逆転現象まで起きているんです。

ちなみに、「種ありの方が味が濃くて美味しい」というこだわり派の農家さんもいて、これがまた奥深いところなんですよ。

巨峰はどこで作られている?産地ランキング

巨峰

「巨峰って、どこの産地が有名なの?」

これも気になりますよね。

巨峰の生産量が多いのは、この2県です。

  • 1位:長野県(全国の3割超)
  • 2位:山梨県(全国の約4分の1)

この2県だけで、日本の巨峰の半分以上を作っている計算になります。

どちらも、盆地で昼夜の寒暖差が大きい土地。

この寒暖差が、巨峰の濃厚な甘みを生むんですね。

そして忘れてはいけないのが、さきほど登場した福岡県の田主丸

生産量では長野・山梨に及びませんが、「巨峰開植の地」として、巨峰の歴史そのものを担ってきた聖地です。

ちなみに、うちのショップで扱っている巨峰も、山梨県南アルプス市の秋山農園さん・隆昇園さんのもの。

まさに巨峰王国・山梨のぶどうです。

※【参考】ぶどう全体の産地ランキングはこちらの記事でどうぞ。
→ 【2025年産・最新】ぶどう生産量ランキングTOP5!1位はやっぱりあの県、5位には意外なあの道県!?

巨峰は「偉大な親」でもある

巨峰

最後に、巨峰のもうひとつのすごさをお伝えします。

巨峰は、食べて美味しいだけじゃありません。

たくさんの人気品種を生み出した「偉大な親」でもあるんです。

たとえば――

● ピオーネ
巨峰 × マスカット・オブ・アレキサンドリア。
巨峰の血にマスカットの香りが加わった大粒品種。

● ナガノパープル
巨峰の血を引く、皮ごと食べられる黒ぶどう。
長野県のオリジナル品種です。

そして実は、あのシャインマスカットも、その血統をたどると巨峰系の品種が関わっています。

つまり――

今、僕たちが食べている人気のぶどうの多くは、巨峰の子孫や親戚なんですね。

戦時中、隠れるようにして生み出された一房のぶどうが、日本のぶどう界の礎になった。

そう考えると、巨峰ってとんでもない存在だと思いませんか?

まとめ:巨峰のすべて

長くなったので、まとめますね。

  • 1937年に交配開始、1942年(戦時中)に誕生。生みの親は大井上康
  • 親は「石原早生 × センテニアル」
  • 正式な品種名は「石原センテニアル」、「巨峰」は商標名(1955年登録)
  • 名前の由来は、研究所から見えた富士山の雄大な峰
  • デビュー当時は「運ぶと落ちる・傷む・高い」で全然売れなかった
  • 逆転の一手が「観光ぶどう狩り」。福岡・田主丸が発祥の地
  • 味は濃厚な甘さ+ほどよい酸味。糖度18〜20度前後
  • 種なし巨峰の普及は2000年以降と、意外に最近
  • 産地は長野1位・山梨2位で、この2県で全国の半分以上
  • ピオーネやナガノパープルなど、多くの人気品種の親でもある

いやー、調べれば調べるほど、巨峰はドラマチックなぶどうでした。

戦争のさなかに生まれ、売れずに苦しみ、その弱点を「ぶどう狩り」という文化に変えて、そして今、王様と呼ばれている。

もはや、一本の映画みたいな話ですよね(笑)

今年の秋、巨峰を食べるときは、ぜひこの物語を思い出してみてください。

きっと、いつもの一粒がちょっと特別に感じられるはずです。

うちのショップでも、山梨・南アルプス市の農家さんが育てた種無し巨峰を取り扱っています。

王様の実力、ぜひ味わってみてくださいね。

 

→ 農家直送の巨峰はこちらからご覧いただけます

 

※【参考】「ぶどうとマスカットって何が違うの?」という疑問はこちらで解決します。
→ ぶどうとマスカットの違いって何?「赤いぶどう」はどっちなのか、果物屋が真剣に考えてみた

 

本日は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
ときわオンラインのヨシハマでした。
それでは〜!

このサイトは、農家直送のフルーツショップ「ときわオンライン」が運営する、フルーツお役立ちサイトです。

ショップでは、安心安全にこだわった農家さんの『無農薬フルーツ』やスーパーに出回ることのない『新品種のフルーツ』など取り揃えています。ご興味があれば見にきて下さい。

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  • この記事を書いた人

ヨシハマ リョウジ

農家直送フルーツショップ「ときわオンライン」店長
スーパーでは手に入らない『無農薬フルーツ』や『地域オリジナル品種』のフルーツを探し求めて、全国の農家さんに会いにいっています。
夏場は石垣島にある「ときわマンゴー園」で農家として収穫作業。
また、「国産バナナを日本の食卓に広めたい!」という夢があり、石垣島で無農薬バナナを育てています。

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