こんにちは、ときわオンラインのヨシハマです。
シャインマスカット。
もう説明のいらないぶどうですよね。
種がなくて、皮ごと食べられて、とにかく甘い。
秋になると「今年もシャインの季節だな」と思う方も多いと思います。
うちのショップでも、ぶどうの中でいちばん動く品種です。
ただ――
このぶどうがどこで生まれたのか、ご存じでしょうか。
「マスカット」という名前から、なんとなくヨーロッパ生まれだと思っている方が
けっこう多いんじゃないかと思います。
実は、日本生まれです。
しかも、生まれるまでに33年かかっています。
今日は、
- シャインマスカットがどこで、どうやって生まれたのか
- 育成の目標だった「いいとこ取り」の話
- なぜ皮ごと食べられるのか
- なぜ種がないのか
- 10年で栽培面積が6倍になった話
- そして、海外に流出してしまったという残念な話
- おいしいシャインマスカットの選び方
まで、お話しします。
それでは、いきましょう!
シャインマスカットは「日本生まれ」です
まず、基本のところから。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 生まれ | 日本(農研機構・広島県の安芸津) |
| 交配 | 1988年 |
| 品種登録 | 2006年3月 |
| 親 | 安芸津21号 × 白南(はくなん) |
| 粒の大きさ | 11〜12g |
| 糖度 | 20度前後 |
| 皮 | 薄くて、皮ごと食べられる |
| 種 | なし(栽培時の処理による) |
| 日持ち | 良い。粒も落ちにくい |
育成したのは、農研機構。国の研究機関です。
場所は広島県の安芸津(あきつ)にあった果樹の研究拠点でした。
「マスカット・オブ・アレキサンドリア」という有名な品種の血は入っていますが、
シャインマスカットそのものは、まぎれもなく日本で作られたぶどうなんですね。
僕もこの仕事を始めるまでは、なんとなく外国のぶどうだと思っていました。
育成の目標は「いいとこ取り」でした
なぜシャインマスカットが作られたのか。
ここを知ると、この品種のすごさが分かります。
ぶどうには、大きく2つの系統があります。
| 系統 | 長所 | 短所 |
|---|---|---|
| ヨーロッパブドウ | 味がよく、皮ごと食べられる。マスカットの香り | 雨と病気に弱い。日本の気候では作りにくい |
| アメリカブドウ | 丈夫で病気に強い。日本でも作りやすい | 皮がつるんと剥ける(皮ごとは食べにくい) |
日本は雨が多く、湿度も高い。
だから、おいしいヨーロッパブドウは、日本ではとにかく作りにくいんです。
そこで研究者たちが考えたのが、
「ヨーロッパの味と、アメリカの丈夫さ。両方持ったぶどうを作れないか」
ということでした。
これを何世代もかけて掛け合わせていった、その先にできたのが
シャインマスカットです。
- ヨーロッパ由来のマスカットの香りと皮ごと食べられる性質
- アメリカ由来の病気への強さ・作りやすさ
まさに「いいとこ取り」なんですね。
交配から品種登録まで、33年
シャインマスカットの家系を見てみましょう。
| 世代 | 品種 | 中身 |
|---|---|---|
| 父 | 安芸津21号 | スチューベン(米) × マスカット・オブ・アレキサンドリア(欧) |
| 母 | 白南(はくなん) | カッタクルガン × 甲斐路 |
| 子 | シャインマスカット | 1988年に交配、2006年に品種登録 |
……ちょっと待ってください。
甲斐路。
先日、山梨の秋山農園さんの記事で、
「作り手が減ってスーパーから消えたぶどう」として紹介した、あの甲斐路です。
シャインマスカットのおばあちゃんにあたるわけですね。
消えかけている品種が、今いちばん売れているぶどうの祖先だった。
これを知ったときは、ちょっとぐっときました。
そして時間の話です。
交配のもとになる研究が始まったのが1973年。
「安芸津21号」ができたのが1978年。
その安芸津21号に白南を掛けたのが1988年。
そこから選抜と試験を重ねて、2006年に品種登録。
通して33年です。
ぶどうの木は、植えてから実がなるまでに数年かかります。
「掛け合わせて、育てて、実を見て、選ぶ」を何度も繰り返すので、
どうしてもこの年月がかかるんですね。
※【参考】祖先にあたる甲斐路については、こちらで書いています。
→ 甲斐路とは?スーパーから姿を消した幻の「赤いマスカット」
なぜ皮ごと食べられるのか
シャインマスカットの最大の魅力は、たぶんここですよね。
洗って、そのまま食べられる。
理由は2つあります。
ひとつは、皮が薄いこと。
ヨーロッパブドウの性質を受け継いでいるので、皮が薄く、口に残りません。
もうひとつが、意外と知られていないのですが、
皮が実から剥がれないことです。
巨峰やピオーネを思い浮かべてください。
指でつまむと、つるんと中身だけ出てきますよね。
あれはアメリカブドウ系の性質で、皮と実が分かれやすいんです。
シャインマスカットは逆で、皮と実がぴったりくっついている。
だから剥こうとしても剥けず、そのまま食べることになる。
そしてもうひとつ、地味にすごいのが裂果しにくいという点です。
ぶどうは雨が降ると水を吸って、皮が裂けてしまうことがあります。
シャインマスカットはこれが起きにくい。
「皮ごと食べられる品種は作れる」ということを証明した品種とも言われています。
なぜ種がないのか
もうひとつよく聞かれるのが、種の話です。
シャインマスカットは、品種としてもともと種がないわけではありません。
そのまま育てると、種ができます。
種なしにしているのは、栽培中にジベレリンという植物ホルモンの液に
房をひたす処理をしているからです。
これは巨峰でもピオーネでも、種なしぶどうなら同じことをしています。
つまり、種がないのは農家さんの手間の結果なんですね。
※【参考】無農薬栽培だと種なしが難しい理由も、この作業に関係しています。
10年で栽培面積が6倍。勢力図が変わりました
シャインマスカットの広がり方は、ちょっと異常です。
農林水産省の統計では、2021年の栽培面積は2,346ヘクタール。
これは2012年の約5倍にあたります。
そして翌2022年には約2,673ヘクタールになり、
巨峰とデラウェアを抜いて、ついに日本一の栽培面積になりました。
長く日本のぶどうの王様だった巨峰が、抜かれたわけです。
産地はこんな感じです(2021年・栽培面積)。
| 順位 | 県 |
|---|---|
| 1位 | 長野県 |
| 2位 | 山梨県 |
| 3位 | 山形県 |
長野と山梨の2県で、全国の半分以上を占めています。
ちなみに岡山県は栽培面積では4位ですが、
1本あたりの収量が高いため、生産量では3位に入ってきます。
なぜここまで一気に広がったのか。
理由ははっきりしていて、
- 高く売れる
- 病気に強く、作りやすい
- 日持ちがして、粒も落ちにくいので流通に強い
農家さんにとって、いいことが多いんですよね。
※【参考】ぶどう全体の産地ランキングはこちらにまとめています。
【残念な話】海外に流出してしまいました
シャインマスカットの話をするとき、
どうしても避けて通れないことがあります。
海外への流出です。
シャインマスカットは2006年に日本で品種登録されました。
ただこのとき、海外での品種登録をしていなかったんです。
当時は輸出をあまり想定していなかったから、と言われています。
ここに落とし穴がありました。
国際的なルールでは、
海外で品種登録するには、国内で登録してから一定期間内(ぶどうは6年)
に手続きをする必要があります。
この期限が過ぎてしまった。
その結果どうなったかというと、
中国や韓国で、シャインマスカットを合法的に栽培できるようになってしまったんです。
今では海外で大量に作られ、逆に他国へ輸出までされています。
日本が受けている損失は、年間およそ100億円とも試算されています。
33年かけて作った品種が、こういう形で外に出ていってしまった。
この件は、2020年の種苗法の改正につながるきっかけのひとつにもなりました。
ちょっと、やるせない話ではあります。
おいしいシャインマスカットの選び方
最後に、実用的な話を。
売り場やお取り寄せで選ぶときは、ここを見てください。
| 見るところ | ポイント |
|---|---|
| 軸(じく) | 緑色で太いものが新鮮。茶色く枯れているのは日が経っている |
| 果粉(ブルーム) | 粒の表面の白い粉。これが残っているものが新鮮 |
| 粒の色 | 濃い緑より、少し黄色みを帯びたもののほうが熟していて甘いと言われます |
| 粒の張り | ぱんと張っていて、指で触ってもへこまないもの |
白い粉は、農薬ではありません。
ぶどうが自分で出しているロウのような成分で、乾燥や雨から実を守っています。
ついているほうが、新鮮な証拠です。
それから、食べる直前まで洗わないこと。
洗うとこの果粉が落ちて、傷みが早くなります。
冷蔵庫では、房のままポリ袋に入れて野菜室へ。
うちで扱っているシャインマスカット
うちでは、山梨県南アルプス市の秋山農園さんのシャインマスカットを扱っています。
山梨はぶどうの生産量が日本一の県で、秋山農園さんはその激戦区にある農園です。
以前メルマガにも書いたのですが、
このシャインを初めて食べたときの感想が
「ハチミツを食べているみたいだな」
でした。
甘いという言葉では足りない感じなんですよね。
発送するその日の朝に収穫してもらっているので、
スーパーに並ぶものとは、届いたときの状態がけっこう違います。
※【参考】秋山農園さんについては、農家さん紹介シリーズで書いています。
→ 秋山農園さん(山梨)消えゆく甲斐路と、生まれたての赤いぶどう
まとめ:シャインマスカットのすべて
長くなりましたが、シャインマスカットのお話でした。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 生まれ | 日本。農研機構が広島県の安芸津で育成 |
| 家系 | 安芸津21号 × 白南。甲斐路が祖先のひとつ |
| かかった年月 | 33年 |
| 目標 | ヨーロッパの味と、アメリカの丈夫さのいいとこ取り |
| 皮ごと食べられる理由 | 皮が薄いうえに、実と皮が離れないから |
| 種がない理由 | 品種の性質ではなく、ジベレリン処理という農家さんの手間 |
| 広がり方 | 10年ほどで栽培面積が約5倍。巨峰を抜いて日本一に |
| 残念な話 | 海外品種登録の期限切れで中国・韓国へ流出 |
調べていていちばん印象に残ったのは、やっぱり33年という数字でした。
スーパーに山積みになっているのを見ていると、
昔からあるぶどうのような気がしてしまいます。
でも品種登録は2006年。まだ20年ほどです。
今いちばん当たり前に並んでいるぶどうが、いちばん新しい。
そして、そのご先祖には、
今スーパーから消えかけている甲斐路がいる。
ぶどうの世界は、本当に面白いなと思います。
※【参考】ほかの品種についても書いています。
→ 巨峰のすべて。「売れなかった」ぶどうが、王様になるまでの物語
本日は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
ときわオンラインのヨシハマでした。
それでは〜!
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