こんにちは、ときわオンラインのヨシハマです。
前回から始まった、農家さん紹介シリーズ。
第1回は、福岡県久留米市の井上農園さんでした。
無農薬のいちじくから始まったお付き合いが、
思わぬ方向に転がって、秋王という柿につながっていった――
そんな話をさせてもらいました。
今回は、第2回。
山梨県南アルプス市の秋山農園さんです。
なぜ今、秋山農園さんなのか。
理由がふたつあります。
ひとつは、まさに今がシーズンのど真ん中だから。
この記事を書いている9月中旬は、秋山農園さんの甲斐路(かいじ)が穫れ始めるころです。
そしてもうひとつ。
こっちが本題なんですが――
うちで甲斐路を作ってくださる農家さんが、今年、一軒だけになってしまったんです。
残った一軒が、秋山農園さんでした。
ぶどうって、品種が消えていく世界なんですよね。
その一方で、新しい品種が生まれてくる世界でもある。
秋山農園さんは、その両方を同じ畑で作っている農園です。
今日は、
- 秋山農園さんがどんな農園なのか
- さくらんぼも桃も作る、働き者ぶりのこと
- 石だらけの畑が、なぜ甘いぶどうを作るのか
- 甲斐路が、うちから消えかけた話
- サンシャインレッドを分けてもらえるまでの話
- ぶどうのあとに始まる、あんぽ柿
まで、お話ししていきます。
秋山農園さんは、以前に動画でも紹介しています。
農園の様子や秋山さんご本人の雰囲気は、こちらのほうが早いと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=pagwSASKS4Q
それでは、いきましょう!
山梨県南アルプス市、ぶどうの激戦区にあります
まず、基本から。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 農園名 | 秋山農園 |
| 場所 | 山梨県南アルプス市 |
| 主な品目 | ぶどう(シャインマスカット・甲斐路・サンシャインレッド ほか)。ほかにさくらんぼ・桃・柿も |
| ときわで扱っているもの | ぶどうとあんぽ柿 |
| ぶどうの出荷 | 8月中旬〜9月下旬 |
| あんぽ柿の出荷 | 10月上旬〜11月下旬 |
| 冷蔵シャインマスカット | 12月 |
山梨県南アルプス市。
甲府盆地の西のはしっこ、南アルプスの山々をすぐ背中に背負っている場所です。
そして、ご存じの方も多いと思いますが――
山梨県は、ぶどうの生産量が日本一。
つまり秋山農園さんは、ぶどうの激戦区のど真ん中にいる農園なんですね。
まわりじゅうがぶどう農家。
そういう場所で、ずっとぶどうを作られています。
さくらんぼ、桃、ぶどう、柿。とにかく働き者なんです
ここ、ちょっと訂正させてください。
秋山農園さんのことを「ぶどう農家さん」と紹介しましたが、
ぶどうだけを作っているわけではありません。
秋山さんは、こんなに作っています。
| 時期 | 手をかけているもの |
|---|---|
| 6月ごろ | さくらんぼ |
| 夏 | 桃 |
| 8月〜9月 | ぶどう(ここがメイン) |
| 10月〜11月 | 柿、そしてそれを干したあんぽ柿 |
さくらんぼ、桃、ぶどう、柿。
書き出してみると、けっこうすごいですよね。
しかも果樹って、品目が違えば、やることが全部違うんです。
剪定の仕方も違う。
病気も虫も違うから、消毒の考え方も違う。
収穫の見極め方にいたっては、まるっきり別の世界です。
さくらんぼは色と艶で判断して、桃は香りと手のやわらかさ、
ぶどうは房の色づきと粒の張り、柿は渋の抜け具合。
それを、ひとりで4種類。
6月にさくらんぼを穫りながら、同じ畑で桃とぶどうの世話をして、
秋にはそのまま柿を干し始める。
一年のうち、手の空く時期がほとんどないわけです。
僕が持っている6月の農園の写真を見ると、
秋山さんがさくらんぼの木に腕を突っ込んで実を探していて、
その同じ日に撮られた別の写真では、まだ青い桃が枝でふくらみ始めています。
同じ人が、同じ日に、両方の面倒を見ている。
正直、すごく働き者だなあと思います。
そのうえで――
メインはやっぱり、ぶどうです。
品目数でいえば4つですが、うちに出してもらっているのも、
農園の中心にあるのも、ぶどう。
だから、ぶどうの年が悪いと、その年はやっぱり厳しい。
これは以前メルマガでも書いたことなんですが、
山梨のぶどうは、ある時期、何年も続けて天候に恵まれませんでした。
雨が降りすぎて、病気が出た年。
逆に雨が足りず、日照不足で色づきが悪かった年。
そういう年が、3〜4年続いたんです。
ぶどうは、天気が悪いと本当に正直に結果が出てしまう果物です。
「今年はダメでした」という連絡をいただくたびに、こちらも肩を落としていました。
そのあと、ようやく普通に天気が回り、例年どおりの仕上がりになった年があって。
そのときの嬉しさは、けっこう覚えています。
「やっと、いつもの秋山さんのぶどうが出せる」と。
果物屋をやっていると、
「うまくいった年」よりも「うまくいかなかった年」のほうを長く覚えている
ような気がします。
農家さんは、たぶんもっとそうなんだろうなと。
石だらけの畑が、甘いぶどうを作っている
秋山農園さんの畑には、ひとつ特徴があります。
とにかく、石が多い。
これ、農家さんからすると、正直やっかいなことなんです。
トラクターを使うと、刃が石に当たる。
当たるたびに、刃が削れていく。
普通に畑を耕すだけで、機械が傷んでいくわけですね。
じゃあなぜ、そんな畑でぶどうを作り続けているのか。
石が多い土は、ぶどうにとっては都合がいいからなんです。
理由は2つあります。
| 石が多いと | ぶどうにどう効くか |
|---|---|
| 根が張りにくい | 木が多少の「ストレス」を感じる。ストレスを感じた木は、糖度の高い実をつけようとする |
| 土に空洞ができる | 水はけがものすごく良くなる。根が水を吸いすぎない=味が薄まらない |
ぶどうって、甘やかすと甘くならない果物なんですよね。
水をたっぷり吸えて、根がのびのび張れる、居心地のいい土で育てると、
実は大きくなるけれど、味がぼやける。
逆に、ちょっと苦しい環境に置かれた木のほうが、
「実に糖を送り込もう」とする。
秋山農園さんの畑は、その「ちょっと苦しい」が、
もともとの土でできてしまっているんです。
機械の刃は減る。
でも、ぶどうは甘くなる。
このトレードオフを引き受けて作り続けているのが、あの畑なんだなと思います。
甲斐路――作ってくれる農家さんが、一軒だけになりました
さて、今日の本題です。
甲斐路(かいじ)。
ご存じでしょうか。
赤紫の、ちょっと細長い粒のぶどうです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 育成 | 山梨の植原(うえはら)葡萄研究所が育成、1977年に品種登録 |
| 掛け合わせ | フレームトーケー × ネオマスカット |
| 特徴 | 糖度が非常に高く、マスカットの香りがある。皮は薄いが食べずに果肉だけをいただく |
| 呼ばれ方 | 「赤いマスカット」 |
| 出荷時期 | 9月中旬〜9月下旬 |
甲斐路という名前は、甲斐(=山梨の昔の呼び名)の路から来ています。
名前のとおり山梨生まれで、今も栽培面積・出荷量とも山梨が日本一。
つまり山梨が本場のぶどうなんですね。
(よく「山梨県のオリジナル品種」と書かれているのを見かけますが、
これは正確ではありません。県ではなく民間の研究所が育てた品種で、
新潟や群馬、山形でも作られています。)
昔は、秋になればスーパーにも並んでいたぶどうです。
ところが今は、ほとんど見かけなくなりました。
理由は、品種が悪くなったからではありません。
作る人がいなくなったからです。
甲斐路は、とにかく栽培が難しい。
手がかかるわりに数が穫れず、作り手が高齢化していくなかで、
「もう甲斐路はやめよう」という農家さんが増えていきました。
全国の栽培面積は、今や30ヘクタールほどしかありません。
そして――
これはうちの話なんですが。
去年まで、うちには甲斐路を作ってくださる農家さんが、もう一軒ありました。
同じ山梨の隆昇園さんです。
ところが今年、隆昇園さんの甲斐路の木が枯れてしまったんです。
ご連絡をいただいたときは、正直こたえました。
今年は久しぶりに隆昇園さんの甲斐路も扱わせてもらう予定で、
準備を進めていたところだったので。
商品ページも、削除しました。
「作る人がいなくなって、品種が消えていく」というのを、
自分のショップの中で見た感じでした。
そういうわけで、
うちの甲斐路は今、秋山農園さんのものだけになりました。
冒頭で「今が旬だから書いた」と言いましたが、
本当のところは「まだ穫れているうちに、ちゃんと紹介しておきたかった」んです。
甲斐路は、根強いファンのいるぶどうです。
食べたことのある方は、毎年探して買ってくださいます。
まだ食べたことがないという方には、
「赤いマスカット」という呼ばれ方が、けっこうそのままだと思っていただければ。
香りが、ちゃんとマスカットなんですよね。
ひとつだけ、お伝えしておきますね。
秋山農園さんのぶどうは、木の上でぎりぎりまで実らせてから穫ります。
そのほうが甘いからです。
ただ、完熟させたぶどうは、そのぶん粒と軸のつながりが弱くなります。
丁寧に箱詰めしてもらっていますが、長時間運ばれる間に粒がいくつか外れていることがあります。
品質の問題ではなく、完熟の裏返しだと思っていただけたら嬉しいです。
※【参考】甲斐路という品種そのものについては、こちらで詳しく書いています。
→ 甲斐路とは?スーパーから姿を消した幻の「赤いマスカット」
サンシャインレッドは「出す分はない」と言われていました
消えていくぶどうの話をしたので、
次は生まれてくるぶどうの話をさせてください。
サンシャインレッド。
「赤いシャインマスカット」と呼ばれている、山梨県生まれの新しい品種です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 育成 | 山梨県果樹試験場。2007年の初交配から約15年かけて誕生 |
| 品種名 | 甲斐ベリー7(「サンシャインレッド」は商標) |
| 掛け合わせ | サニードルチェ × シャインマスカット |
| 品種登録 | 2022年 |
| 特徴 | 種なし・皮ごと食べられる・マスカットの強い香り・高い糖度 |
シャインマスカットの血を引いていて、
種なし・皮ごと・激甘という長所をそのまま受け継いでいる。
そこに赤系ぶどうの爽やかな香りが乗っている、という品種です。
僕はこの品種の存在を知ったときから、
「どうしても、うちで取り扱いたい」
とずっと思っていました。
でも、当時は新品種ということもあって、収穫量がものすごく少なかったんです。
秋山農園さんからも、
「ここ数年は、ときわさんに出す分もないかもしれない」
と言われていました。
つまり、自分のところの販売分でいっぱいいっぱいだった、ということですね。
それが2024年、秋山さんのご好意で、少しだけ確保してもらえたんです。
数キロだけ。
それでもうちにとっては、ずっと欲しかったものがやっと来たという感じで、
このときは本当に嬉しくて、メルマガまで号外で出したのを覚えています。
そして今。
木が育って、収穫量も増えてきました。
秋山農園さんからは、今年こんなふうに言われています。
「たくさん売ってくれ」
……いい話だなと思うんですよね。
「出す分はない」から「たくさん売ってくれ」まで、数年。
甲斐路が畑から消えていくのと同じ時間で、
別のぶどうが、ちゃんと畑に根づいていっている。
同じ農園の中で、その両方が起きているわけです。
※【参考】サンシャインレッドがどんなぶどうなのかは、こちらで詳しく書いています。
ぶどうが終わると、あんぽ柿が始まります
冒頭で「柿も作っている」と書きましたが、
秋山農園さんの秋は、その柿から始まります。
あんぽ柿です。
ぶどうの収穫が9月下旬に終わって、
入れ替わるように、10月上旬からあんぽ柿が始まる。
秋山農園さんの1年は、だいたいこういうリレーになっています。
| 時期 | 出てくるもの |
|---|---|
| 8月中旬〜下旬 | 巨峰・ピオーネ |
| 9月上旬〜下旬 | シャインマスカット・サンシャインレッド |
| 9月中旬〜下旬 | 甲斐路(今ここ) |
| 10月上旬〜11月下旬 | あんぽ柿 |
| 12月 | 冷蔵シャインマスカット |
あんぽ柿というのは、干し柿のなかでも半分だけ乾かしたものです。
カチカチにはせず、中はとろっとしたままで止める。
秋山農園さんのあんぽ柿を手で割ると、
中からあめ色のとろっとした果肉が出てきます。
写真で見ても、けっこうすごいです。
干し柿というより、和菓子に近い感じですね。
砂糖は一切入っていません。
渋柿の渋が抜けて、そのまま甘さに変わったものです。
※【参考】あんぽ柿と干し柿の違いについては、こちらで書いています。
まとめ:消えるぶどうと、生まれるぶどう
長くなりましたが、秋山農園さんのお話でした。
最後に、あらためて整理しておきますね。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 場所 | 山梨県南アルプス市。ぶどう生産量日本一の県のど真ん中 |
| 作っているもの | さくらんぼ・桃・ぶどう・柿。一年中、手が空かない。メインはぶどう |
| 畑 | 石が多い土壌。機械には厳しいが、木にストレスがかかって糖度が上がる |
| 甲斐路 | 作り手が減ってスーパーから消えたぶどう。うちでは秋山農園さんのものだけに |
| サンシャインレッド | 「出す分はない」から「たくさん売ってくれ」まで育った新品種 |
| あんぽ柿 | ぶどうが終わる10月から。砂糖を使わない、半熟の干し柿 |
今回この記事を書きながら、
果物って、ずっと同じものが並んでいるわけじゃないんだな
と、あらためて思いました。
作る人がいなくなれば、その品種はスーパーから消えます。
逆に、誰かが新しい木を植えれば、10年後にはそれが当たり前の顔で並んでいる。
どっちも、畑で決まっているんですよね。
甲斐路は、今がまさにその時期です。
旬は短いので、気になった方はお早めにどうぞ。
※【参考】これまでに紹介した農家さんの記事は、こちらです。
→ 農家さんインタビュー:グリーンジャンクションの田村さん(無農薬栽培・和歌山)
→ 【三重・久居の梨】親子三代60年「工藤果樹園」さんに、夏〜秋の梨づくりを聞いてきました
本日は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
ときわオンラインのヨシハマでした。
それでは〜!
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