こんにちは、ときわオンラインのヨシハマです。
秋王(あきおう)という柿をご存じでしょうか。
福岡県で生まれた、比較的新しい柿です。
僕は柿がかなり好きで、勉強も兼ねていろんな品種を食べてきたんですが、
初めて秋王を食べたときは、正直びっくりしました。
「これって、柿のレベルじゃないな」と。
甘さも、食感も、果汁の量も、それまで食べてきた柿と違ったんですね。
ただ、この柿――
とにかく、手に入りません。
福岡県の外では作ることができず、
しかも福岡県内でも、作れる農家さんが限られています。
そして今回いろいろ調べていくうちに、
「なぜ種がないのか」という部分に、とんでもない話が隠れていました。
世界初なんだそうです。
今日は、
- 秋王がどんな柿なのか
- 親である富有柿と太秋柿のこと
- なぜ種がないのか(ここが本題です)
- 育成にかかった、気の遠くなるような手間
- なぜ福岡県でしか作れないのか
- 僕が初めて食べたときの話
まで、お話しします。
それでは、いきましょう!
秋王ってどんな柿?
まず、基本のところから。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 品種名 | 福岡K1号(「秋王」は商標名) |
| 育成 | 福岡県農業総合試験場 |
| 育成開始 | 2001年(平成13年) |
| 品種登録 | 2012年(平成24年) |
| 親 | 富有 × 太秋 |
| 種 | ほぼ入っていません |
| 大きさ | 300g超の大玉。350g前後になるものも |
| 糖度 | 18度以上(20度前後という資料もあります) |
| 食感 | 太秋に似たサクサク。果汁が多い |
| 収穫期 | 10月中旬〜11月上旬。富有より早く、太秋とほぼ同じ |
| 栽培できる場所 | 福岡県内のみ(許諾契約を結んだ生産者・生産団体に限る) |
ざっと見ただけでも、なかなかの内容です。
大玉で、種がなくて、糖度が18度以上ある甘柿。
しかも完全甘柿なので、渋抜きの必要がありません。
木で熟して、そのまま食べられます。
親は「富有」と「太秋」。いいとこ取りなんです
秋王の親をご覧ください。
富有 × 太秋。
柿が好きな方なら、この時点で「ずるいな」と思うはずです(笑)
| 親 | どんな柿か | 秋王が受け継いだもの |
|---|---|---|
| 富有 | 甘柿の王様。昔からの定番で、強い甘み | あの甘さ |
| 太秋 | 梨のようなサクサク食感と、多い果汁 | 食感と果汁 |
つまり秋王は、
富有の甘さと、太秋のサクサク感を両方持っているわけです。
僕は柿のおすすめ品種をランキングにしたことがあるんですが、
そのとき1位にしたのが太秋、2位が秋王でした。
味だけで言えば、正直ほとんど差がありません。
というより、甘さは秋王のほうが上だと思っています。
では、なぜ太秋を1位にしたのか。
値段です。
秋王は、ほかの柿とは価格の桁が違うんですよね。
「毎日食べる柿」ではなく、「特別なときの柿」という位置づけになります。
※【参考】親である2品種については、こちらで詳しく書いています。
なぜ種がないのか——「九倍体」という答え
さて、ここが今日いちばんお伝えしたいところです。
秋王には、種がほとんど入っていません。
切ると、あの星形の模様がきれいに出るだけで、種に当たりません。
食べやすさで言えば、これはもう圧倒的です。
では、なぜ種がないのか。
答えは、染色体の数にあります。
柿はふつう「六倍体」です
いきなり難しい言葉が出てきましたが、そんなに複雑な話ではありません。
生き物は、親から染色体のセットを受け継ぎます。
人間は2セット(父から1つ、母から1つ)。これを二倍体といいます。
ところが植物には、セットをたくさん持っているものがいるんですね。
柿は、6セット。六倍体です。
そして――
秋王は、9セット。九倍体なんです。
9は、2で割り切れません
ここがポイントです。
種ができるには、花粉と卵が作られる必要があります。
このとき、持っている染色体のセットを半分ずつに分けるという作業が起きます。
6セットなら、3と3。きれいに分かれます。
でも、9セットは半分に分けられない。
4.5セットずつ、というわけにはいかないんですね。
その結果、まともな花粉も卵もできず、種ができない。
これが、秋王に種がない理由です。
そして秋王は、
世界で初めて作られた「九倍体の種なし甘柿」なんだそうです。
……種がないことに、そんな理由があったとは。
僕は正直、「渋抜きの種なし柿と同じようなものだろう」と思っていました。
まったく違いました。
※【参考】同じ「種なし」でも、平核無(おけさ柿)はまったく別の仕組みです。
100粒のうち、使えたのは7粒足らず
では、その九倍体をどうやって作ったのか。
ここがまた、とんでもない話でした。
福岡県は2001年、富有の雌花に、太秋の花粉をつけました。
ただ、この交配には最初から大きな壁があります。
甘柿は、渋柿に対して「潜性(劣性)」なんです。
つまり甘柿を作りたければ、甘柿同士を掛け合わせるしかない。
ところが甘柿同士の交配は、とにかくうまくいかない。
実際、この交配でできた種のうち、
目当ての「不完全種子」は、全体のたった6.7%ほどしか採れませんでした。
100粒あって、7粒に届かないわけです。
しかもこの不完全種子、そのまま蒔いても芽が出ません。
中身がスカスカの、しいなのような種だからです。
そこで福岡県は、胚培養という方法をとりました。
種の中から胚(芽になる部分)だけを取り出して、
人工的に培養して育てたんですね。
そうしてようやく、九倍体の苗が生まれた。
交配が2001年。品種登録が2012年。
11年です。
「新しい品種を作る」というのは、こういう時間のかかり方をするんだなと、
調べていて何度も唸りました。
福岡県の外では、作れません
秋王がなかなか手に入らない理由が、もうひとつあります。
栽培できるのが、福岡県内だけなんです。
正確に言うと、
福岡県と許諾契約を結んだ、県内の生産者・生産団体に限る。
県が育成した品種なので、県が権利を持っているんですね。
だから他県の農家さんが「うちでも作りたい」と思っても、作れません。
さらに、まだ木が増えている途中の品種でもあります。
- 福岡県でしか作れない
- 福岡県内でも作っている農家さんが限られる
- そもそも木がまだ少ない
この3つが重なって、市場にほとんど出てこない柿になっています。
スーパーで秋王を見かけることは、まずないと思います。
初めて食べたとき「柿のレベルじゃないな」と思いました
ここからは、僕の話です。
冒頭にも書きましたが、僕は柿がかなり好きです。
フルーツ全般で見ても、柿は上位に入ります。
それで、ここ数年は勉強も兼ねて、いろんな品種を食べてきました。
そのなかで秋王を初めて食べたとき――
「これって、柿のレベルじゃないな」
と思ったんですよね。
まず、噛んだ瞬間の食感が違います。
柿というより、梨に近いサクサク感です。
そして果汁。
柿ってふつう、そこまでジューシーな果物ではないですよね。
秋王は、噛むと果汁が出てきます。
そのうえで、甘い。
「甘いですよ」ではなく、「甘っ!」と声が出る甘さです。
はじめて食べる方は、たぶん
「なんだこれ」「なんだ、この梨みたいなシャクシャク感は」
という感想になるんじゃないかと思います。
育てているのは、福岡県久留米市の井上農園さん
うちで扱わせてもらっている秋王は、
福岡県久留米市の井上農園さんが育てたものです。
もともと井上農園さんとは、無農薬のいちじく「とよみつひめ」の
お付き合いから始まりました。
そこから話が転がって、秋王までたどり着いた、という流れです。
ひとつ、正直にお伝えしておきますね。
秋王は、無農薬ではありません。
井上農園さんは安心安全をかなり意識されている農家さんで、
いちじくは無農薬で育てられています。
秋王も必要最低限の農薬に抑えて育てられていますが、
無農薬ではないんです。
柿は無農薬が難しいうえに、秋王は新しい品種で、
栽培方法そのものがまだ確立されていないのだそうです。
そのあたりは、隠さずにお伝えしておきます。
※【参考】井上農園さんについては、農家さん紹介シリーズで書いています。
冬まで待つ「冷蔵秋王」もあります
秋王の収穫は10月中旬から11月中旬まで。
ただ、それを特殊な冷蔵庫で保存して、冬に出すという商品もあります。
冷蔵秋王です。
| 商品 | 発送時期 |
|---|---|
| 秋王(1.8kg) | 10月中旬〜11月中旬 |
| 冷蔵秋王(2玉・桐箱/6玉・化粧箱) | 11月下旬〜1月中旬 |
柿のシーズンが終わったあとに、秋王が食べられるわけですね。
桐箱に入っているので、年末年始の贈り物にされる方が多いです。
まとめ:種がない理由に、11年が詰まっています
長くなりましたが、秋王のお話でした。
最後に整理しておきますね。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 正体 | 福岡県が育成した完全甘柿。品種名は福岡K1号 |
| 親 | 富有(甘さ)× 太秋(サクサク食感と果汁) |
| 種がない理由 | 九倍体だから。9セットは半分に分けられず、種ができない |
| すごいところ | 世界初の九倍体種なし甘柿 |
| 育成 | 使える種は6.7%ほど。胚培養で育て、交配から登録まで11年 |
| 手に入りにくい理由 | 福岡県内の許諾農家しか作れないうえに、木がまだ少ない |
| 味 | 糖度18度以上。サクサクで果汁が多い |
今回この記事を書きながら、
「種がない」という一行の裏に、11年があるんだな
と思いました。
スーパーで種なしの果物を手に取るとき、
僕らはたいてい、そのことを考えません。
でも誰かが、100粒のうち7粒に満たない種を拾い集めて、
その中身だけを取り出して育てている。
そういう作業の先に、あの星形の断面があるわけです。
秋王は、まもなく収穫が始まります。
気になった方は、一度食べてみてください。
「これ、柿か?」
となると思いますよ。
本日は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
ときわオンラインのヨシハマでした。
それでは〜!
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