こんにちは、ときわオンラインのヨシハマです。
突然ですが、皆さんに質問です。
「甲斐路(かいじ)」というぶどう、知っていますか?
「ああ、懐かしい!昔よく食べた!」
そう答えた方は、おそらく40代以上・・・かもしれません(笑)
明るい赤紫色の、美しい粒。
上品なマスカットの香り。
ひと昔前まで、秋のぶどう売り場の主役級だった「赤いマスカット」こと甲斐路。
ところが最近、スーパーでほとんど見かけなくなったと思いませんか?
そうなんです。
甲斐路は今、作る農家さんが激減して、市場からどんどん姿を消している「幻のぶどう」になりつつあるんです。
実は、うちのショップでもある事件(後で話します)が起きて、甲斐路の希少さを身をもって実感しました。
今日は、そんな甲斐路について、
- どうやって生まれたのか(誕生の物語)
- どんな味なのか
- 値段はどのくらいか
- なぜ消えつつあるのか
甲斐路のすべてを、果物屋のヨシハマが語り尽くします。
「懐かしい」という方も、「初めて聞いた」という方も、読み終わる頃にはきっと食べたくなっているはずですよ。
それでは、いきましょう!
甲斐路ってどんなぶどう?ひとことで言うと「赤いマスカット」
まず、甲斐路のプロフィールから。
甲斐路をひとことで表すなら、
「赤いマスカット」です。
特徴を並べてみますね。
- 見た目:黄緑がかった地色に、明るい赤紫が差した美しい果皮
- 香り:上品なマスカット香
- 甘さ:糖度は18〜23度と、ぶどうの中でもトップクラス
- 食感:果肉は締まっていて、コクのある濃厚な甘さ
糖度18〜23度って、すごい数字ですよ。
あのシャインマスカットの糖度がだいたい18〜20度と言われていますから、甘さでは、シャインに勝るとも劣らないんです。
しかも甲斐路は、ヨーロッパ系の血を引く「純粋欧州種」。
マスカットの高貴な香りを受け継いだ、正真正銘の「マスカット一族の赤いお姫様」なんですね。
ちなみに、皮は薄いけれど硬めなので、シャインのように皮ごとではなく、皮をむいて果肉を味わうタイプ。
「ぶどうは皮をむいて食べるもの」だった、あの頃の正統派スタイルのぶどうです。
このひと手間が、逆にいいんですよ。
つるんとむけた果肉を口に入れた瞬間の、香りと甘さの広がり。
「ああ、ぶどうを食べてるなあ」という幸福感があります(笑)
名前の由来は「甲斐の国」への路
「甲斐路」という名前、なんだか旅情があっていい名前だと思いませんか?
「甲斐(かい)」は、山梨県の旧国名です。
そう、武田信玄の「甲斐の国」ですね。
その甲斐へと続く路(みち)——
「甲斐路」。
山梨生まれのぶどうであることを、名前がそのまま物語っているんです。
ちなみに、中央本線の特急列車にも「かいじ号」がありますよね。
あちらも同じ「甲斐路」由来。
新宿から山梨へ向かう特急と、山梨から全国へ旅立ったぶどう。
どちらも「甲斐への路」を背負った名前なんです。
誕生の物語:県でも国でもなく「町の研究所」が生んだ
さて、ここからが面白いところです。
甲斐路は、誰が作ったと思いますか?
山梨県の試験場?
国の研究機関?
実は、どちらでもありません。
甲斐路を生み出したのは、山梨にある「植原(うえはら)葡萄研究所」という、民間のぶどう育種研究所なんです。
国でも県でもなく、一つの研究所が情熱を注いで生み出した品種。
かけ合わせは、
フレーム・トーケー × ネオ・マスカット
「フレーム・トーケー」から美しい赤い色を、「ネオ・マスカット」からあの香りを受け継ぎ、
長い育種の末、1977年(昭和52年)に品種登録されました。
昭和50年代といえば、まだ巨峰が高級ぶどうとして広まっていた時代。
そこに登場した「赤くて、マスカットの香りがして、糖度20度超え」のぶどうは、たちまち評判になり、
「元祖・高級ぶどう」として、贈答用の世界で一時代を築いたんです。
ちなみにこの植原葡萄研究所、ぶどう業界では知る人ぞ知る名門で、数々の品種を世に送り出してきた「ぶどう育種のレジェンド」的存在。
甲斐路は、その代表作のひとつなんですね。
産地はどこ?山梨が「全国の8割以上」
甲斐路の産地の話をしましょう。
現在、甲斐路の栽培面積は全国で約30ヘクタールほど。
・・・この数字、実はかなり少ないです。
比較すると、シャインマスカットの栽培面積は全国で数千ヘクタール規模。
甲斐路は、その100分の1程度しかありません。
そして、その貴重な甲斐路の
8割以上を、山梨県が栽培しています。
栽培面積も出荷量も、山梨がダントツの日本一。
次いで新潟・群馬・山形などでも作られていますが、規模はごくわずか。
つまり甲斐路は、
「山梨生まれ・山梨が本場」
の、山梨を象徴するぶどうなんです。
しかも山梨県内でも、作っているのは限られた農家さんだけ。
「山梨の直売所でしか出会えないぶどう」になりつつあるのが現状です。
※【参考】ぶどう産地の全国勢力図はこちら。もちろん1位は山梨です。
→ 【2025年産・最新】ぶどう生産量ランキングTOP5!1位はやっぱりあの県、5位には意外なあの道県!?
値段はどのくらい?「高級ぶどう」の今の相場
「で、甲斐路っていくらするの?」
気になりますよね。
あくまで目安ですが、だいたいこんな相場感です。
- 1房(500g前後):1,000円台〜
- 贈答用の化粧箱(1kg・1〜2房):3,000円前後〜
- 家庭用のまとめ買い(2kg〜):1kgあたり1,500円前後〜
「元祖・高級ぶどう」だけあって、デラウェアや巨峰よりは高めの価格帯。
でも、面白いことに——
今をときめくシャインマスカットと比べると、同等か、むしろ手に取りやすいことも多いんです。
糖度はシャイン級、香りもマスカット。
なのに、知名度で価格が抑えられている。
正直、果物屋の目から見ると
「甲斐路、コスパ良すぎませんか?」
と思ってしまいます(笑)
知る人ぞ知る、というのはこういうことなんですね。
なぜスーパーから消えたのか?甲斐路の「今」
さて、冒頭の疑問に戻りましょう。
あんなに愛された甲斐路が、なぜスーパーから姿を消しつつあるのか。
理由は、大きく2つあります。
理由1:栽培が、とにかく難しい
甲斐路は純粋なヨーロッパ系品種。
ヨーロッパ系のぶどうは雨に弱く、湿気の多い日本で育てるのは至難の業です。
色をきれいに出すのも難しく、手間ひまのかかり方が段違い。
高齢化が進むぶどう農家にとって、作り続けるのが大変な品種なんです。
理由2:シャインマスカットへの世代交代
そして、決定打がこれ。
シャインマスカットの登場です。
皮ごと食べられて、種もなくて、高値で売れる。
農家さんの立場からすれば、難しい甲斐路の木を抜いて、シャインに植え替えるのは自然な流れでした。
こうして甲斐路の畑は年々減り続け、気づけば全国でわずか30ヘクタールに。
時代の主役交代の裏で、静かに消えていこうとしている——
それが、甲斐路の「今」なんです。
うちのショップでも「事件」が起きました
冒頭でお話しした「ある事件」です。
うちのショップでは長年、山梨・南アルプス市の2つの農園から甲斐路を仕入れてきました。
ところが今年、そのうちの一軒隆昇園さんの甲斐路の木が、枯れてしまったんです。
木が枯れたら、もう出荷はできません。
新しく植えても、実がなるまで何年もかかります。
そして、植え替えるならシャインを選ぶ農家さんが大半という時代。
つまり、一度消えた甲斐路は、もうほとんど戻ってこないんです。
「幻のぶどう」という言葉が、決して大げさではないことを、僕は身をもって実感しました。
それでも、甲斐路のファンは熱い
こんな状況の甲斐路ですが、面白い現象が起きています。
うちのショップで、甲斐路の注文が年々増えているんです。
理由はおそらく、シンプルで。
「他で買えなくなったから」。
昔から甲斐路を愛してきたファンの方々が、スーパーで見つけられなくなり、探して探して、うちにたどり着いてくださる。
「甲斐路、まだ扱ってたんですね!」
「これこれ、この味!懐かしい!」
そんな声をいただくたびに、このぶどうが積み重ねてきた約50年分の信頼を感じます。
流行りのぶどうもいいけれど、半世紀愛され続けてきた味には、それだけの理由があるんですよね。
※【参考】「赤いのにマスカット?」と思った方は、こちらの記事でスッキリします。マスカットの正体は「色」ではなく「香り」なんです。
→ ぶどうとマスカットの違いって何?「赤いぶどう」はどっちなのか、果物屋が真剣に考えてみた
まとめ:甲斐路のすべて
今日のお話を、まとめますね。
- 甲斐路は「赤いマスカット」。糖度18〜23度、上品なマスカット香の純粋欧州種
- 名前の由来は山梨の旧国名「甲斐」への路
- 山梨の民間育種場「植原葡萄研究所」が生んだ。フレーム・トーケー×ネオ・マスカット、1977年登録
- 栽培面積は全国約30ha。うち8割以上が山梨=「山梨生まれ・山梨が本場」
- 値段は1房1,000円台〜、贈答用1kgで3,000円前後が目安
- 栽培の難しさとシャインへの世代交代で、農家が激減。スーパーから姿を消しつつある
- 食べるなら「今」。一度消えた甲斐路は、ほとんど戻ってこない
正直に言います。
甲斐路は、この先もっと手に入りにくくなると思います。
だからこそ、「昔食べたあの味をもう一度」という方も、「幻の赤いマスカット、食べてみたい」という方も、
今年の秋、ぜひ味わってみてほしいんです。
うちのショップでは、山梨・南アルプス市の秋山農園さんが大切に守り続けている甲斐路を、9月中旬ごろからお届けします。
隆昇園さんの木が枯れた今、うちで扱える甲斐路は、秋山農園さんのものだけ。
数に限りがありますので、気になる方は早めにチェックしてみてくださいね。
本日は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
ときわオンラインのヨシハマでした。
それでは〜!
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